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探偵会社からの電話

昔々、会社勤めをしていた頃に、
「探偵会社の人」という人から仕事中に電話をもらったことがあった。
探偵会社の人と名乗る人なわけだから、
当然私の名前も勤務先もとっくに調べてわかっていたわけだ。

会社の代表電話経由で私にかけてきた電話だった。
電話の相手は、私が本人であることを確認し、
ついでに私のその日の服装を言い当てた。

私は気色悪くなり、腹が立ってきた。
しかし探偵会社が私に一体何の用かと、
好奇心が頭をもたげ、私は相手の話を聞いてみることにした。

あなたに会いたいと言う男性がいる、と言われた。
その人は、あなたの会社のすぐ近くの○○という会社に勤めていて、
前からあなたを気に入っていて、でも話しかけるきっかけも勇気もない、
それでこちらに依頼が来た。

はあぁ?
そんなに私に声をかけたきゃ、
会社帰りの私を待ち伏せて、声をかければ良いではないか(会社が近いと言うのなら)。
何をまわりくどいことを。

(あ、そもそも声がかけられないから、こういうことになっているのね。)

探偵会社に依頼をするなど、かなりお金もかかることではないだろうか、
なんてことも頭をよぎる。
もしかして、気弱でリッチなサラリーマンか。

いい男なら、会ってあげようかな。
でも、いい男なら、やっぱり私を待ち伏せて、
堂々と告白してくれそうなものじゃないか。

いつしか興味津々になってしまったアホな私は、
会う日と時間を決めてしまった。

さて、数日後の待ち合わせ場所に現れた「探偵会社の人」というのは女性で、
私と「その男性」を引き合わせた後、そそくさといなくなった。

どうする。

その男性は、憧れ続けた?私に面と向かって会えて、
今度はどうすりゃいいのかわからなくなったみたいだった。

私は、と言えば、好奇心でのこのこ出かけてきた自分を早くも呪っていた。
目の前の男性は、上がってしまって気の毒なほどもじもじしていた。
彼は小柄で、私のほうが背が高かった。
(私は164cmなので、ハイヒールを履くと、
 小柄な男性より背が高いことが往々にしてあった。)

好みのタイプでもないし、わざわざ来てバッカみたい、と思ったものだから、
いっそこのまま立ち去ろうかとも考えたが、
それじゃあんまりだろうかと思い直して、
とりあえず上の喫茶店に行きましょうか、と誘ってやった。

ああもう。
自分に腹が立って、何をしゃべったのか覚えてもいない。
平凡な、もてないタイプの男性だった。

アイスコーヒーを…そうだ、あの時彼はアイスコーヒーを頼んで、
どぎまぎしながら飲み終えて、
そして彼は、まだ氷の残るアイスコーヒーグラスに、
脇のグラスの水を注いで、それをストローでじゅーっと飲んだ。

この行為、実は私のかなり嫌いとする行為なんである。
私の美意識が許さないのだ。

私の我慢はそこまでだった。
もうそれ以上そこに座っていられなくなった。

すみません私はこれで、と席を立った。
支払いは、もちろん彼が持つに決まっている。私は気にもかけなかった。

まだ若く、場合によっては小生意気で、
人よりちょっとはお洒落もしていると自負していた自分だった。
あんな男に惚れられるなど、私は我が身が情けなかった。

数日後、その男性から会社の住所で私宛てに手紙が届いた。
私の自宅住所までは調査しないでいてくれたのだろうか。

会社宛てに届く郵便物は、全て総務部で配達記録が取られ、
開封された後こちらに回ってくるシステムだった。
事務の女の子が、ガーネットさんこんな手紙が…と遠慮がちに私に持って来た。

ああ、あの冴えない男は、
あの日私の気分を害してしまったことを悔やんで詫び状を書き送ってきたのだった。
読むのも腹立たしかった。

しかしそれきり、探偵会社からも彼からも、何の連絡も無かった。

ストーカーなんて言葉が世に生まれるずっと前の出来事だった。
彼がストーカーになるようなタイプの男じゃなくて、ほんとに良かった。

もしも彼が私と同じ会社に勤めていて、
もしも彼が私の同僚だったなら、
たとえ見た目は冴えない男でも、
人柄とか性格とか仕事を通してわかることもできただろうに。
一緒に仕事をするうちに、
彼の良さを見出すことが、もしかしたらあったかもしれない。

しかし出会い方がまずかったな。
と言うか、やはり彼は私の好みじゃ全く無かった。

彼も悩んだのだろうが、
選択した「探偵会社に依頼」というやり方は、
どうだったんだろうなあ。
私に対しては、残念な結果に終わってしまったわけだ。

彼に、「当たって砕けろ」的な潔さがあったなら良かったのに、
……って、何が良かったのかもよくわからぬまま、
私はその出会いをいつしか忘れていった。

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