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老人ホーム

週末は、夫の実家に行っていた。
9月以来、具合が悪く入退院を繰り返している義父の見舞いも、
理由の一つだった。
6月に80歳になった義父は、9月に入りぐっと衰えた。

私は、義父が入院中と聞いていたので、
見舞うのはてっきり病院だと思っていたら、
私達があちらに向かった先週金曜午後に、
ちょうど義父は退院だったそうだ。

行きの車の中で夫から聞いてそうとわかり、
まあそれは良かったわねと言ったら、
いや、父は今日、家には帰らず老人ホームに入る、と夫が答えた。
今家に戻っても、きっと父はパニックする、と夫が言う。
というのは、バスルームのリフォーム工事が始まるからだ。

義母を始め、夫の兄弟達が前々から検討してきたバスルームのリフォームだったが、
ようやく義母が心を決めて取り掛かることになり、
工事が月曜から約10日間の予定で始まる。

壁と床のタイルも総取替えになるから、
家の中は何かとうるさくなるし、
水の全く使えない日もあったりするので不便にもなる。

認知症の進んでいる義父は、事の次第を理解できない。
誰が何度話して聞かせても、もうわからない。
ただ家に帰りたくて仕方ない。

義両親の家は、築何十年も経っているから、
もうあちこちが傷んできている。
リフォームしたほうがいいんじゃないかと思う箇所は、
なにもバスルームだけじゃない。

義母も義兄も、衰えて認知症の進んでいる義父が、
リフォーム工事に耐えられないだろうと心配し、
ずっと工事に踏み切る決心がつかずにいた。

しかし義父はもう、一人で思うように動けず、
バスタブに入ることもままならない。
思い切って、バリアフリーのシャワールームに大改造だ。

お風呂が壊れたから直すんだよと、
何度となく誰かしら義父に説明するけれども、
義父にはもうわからない。

わからないから、
業者さんの出入りを不審に思ったり、怖がったり怒ったりするだろう、
というのが義母の心配だ。

それで今回の、老人ホーム一時入居。
夫の実家と同じ町にある老人ホームだから、車ならほんの数分で行ける。

その建物は、高台にあり、概観はとても素敵でドイツらしくきれいなデザインだ。
木々に囲まれた広い敷地には、隣接して幼稚園もある。

考えてみれば、私は生まれて初めて、老人ホームというところに足を踏み入れた。
玄関を入ったロビーに、20人くらいだったろうか、お年寄りがいた。
沢山あるソファに、座って眠っている人や、
座ってただぼんやりと空(くう)を見ている人が多かった。
どの人も、動かずにじいっと座っていた。

時折、従業員の人がロビーを横切り、私達に笑顔を見せて挨拶をした。
ああ、こういう所でお年寄りだけを相手に働く人は、なんてすごいんだろう。
大変な大変な仕事だと思った。

私は、息が苦しくなった。
一度に沢山のお年寄りを見て、
それはただでさえ哀れで切ない光景だったし、
これが、今は若い人の、未来の姿なのだ、と思いつらくなった。

どの人も、若くはつらつとした時があったのに、
今は、ぼんやりとして、それぞれがとても一人ぼっちだった。

義父は、ロビーの端の、一人がけのソファに座っていた。
私がハローと言って握手をすると、
ああ○○が来た、と言って、私の名ではなく、うちの娘の名を言った。

義父は、退院して家に帰れるとばかり思っていただろうから、
老人ホームに連れて来られて、訳もわからず切なげだった。
見ているこちらも苦しくなった。

義母と義母の息子達が決めたことだから、
私はそれに口出すつもりはないが、
泣きそうな義父を見るにつけ、かわいそうになった。
肉親の誰もが、もっとつらく複雑なんだろう。

でも、老人ホームでなければ、それではどうする?と考えても、
あとは家に連れて帰るしかない。
そうすれば義父がパニックになると周りは心配する。

年をとる、というのは、なんて大変なことだろうかとまた思う。
それでも、義父はまだいいのだ。
だってよそには、もっともっと悲惨な状況が限りなくある。

私は、お年寄り達の姿を見て、息が詰まりそうになった。
「老いる」ということをこれ程目の当たりにして、
何とも言えない複雑な気持ちになった。
本当に、文字通り、何にも言えなくなった。

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