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口も聞かない散歩道

26日(クリスマスの祭日二日目)は、夫と散歩に出かけた。

24~26日のクリスマス期間は、
「家族で過ごす時間」ということになっているので、
友人一家と会う、というようなことは、普通はしない。
出かけるとしても、家族や親戚と、になる。

こちらの人は、家の近所を散歩するのも好きだが、
どこかちょっと遠くまで車で出かけ駐車場に車を停めてそこからぶらぶら歩く、
ということもよくする。
 
夫が夏にマウンテンバイクで行ったことがあるという
どこかの山のふもとのヒュッテまで、歩いて行ってみないかと言われ、
付き合うことにした。

どのくらい歩くのかと私はいつも聞く。
夫は、一番近い駐車場からは片道30分だ、と答えた。

私は、片道が徒歩1時間くらいの距離になると、実はあまり気が進まない。
何というか、、、歩く単調さに飽きてくる。

子供の頃の遠足で山歩きをした時に、
坂道がそれこそ死ぬかと思うくらいきつくて、
山のてっぺんに着いた時には、
達成感どころではなく、もう金輪際山になど登るものかと思ってしまった。
降りる時がまた大変で、
もう金輪際山になど、と思う気持ちが確固たるものとなった。

娘のお下がり(お上がりとも言うらしい)の
MP3プレーヤーを聞きながら歩くならかなりましだが、
そういうことをすると今度は夫が、
アナタはワタシと喋りたくないのか、と文句を言う。

正直言うと、夫と喋りたいことなど別にもうない。
できることなら、しぃーんと口を聞かずに景色だけ見て歩きたい。
前にもどこかで書いたが、18年聞き続けてきた夫のニホンゴには、
ほとほと疲れ果てている私だ。

日本語忘れてもいいからさ、普段喋る言葉、ドイツ語に戻したら?
などと夫に言おうものなら、
夫は故意に小難しい単語ばかりを並び立てて私にドイツ語で話しかけてくる。

そうすれば私がすぐに降参し、
やっぱり私には無理だわ、日本語を話してね、ありがとうあなた、
とでも言うだろうと思っているのだ。

しかし、わかる時にはわかる、わからない時にはわからない。
それは、彼が何語を話そうと関係が無い。

さて、山歩き、であった。

山歩きは、紅葉の時などは景色が美しいから、時々なら楽しい。

坂をしばらく登って行った先の、
山小屋風レストランや、あるいは、もっと簡素なヒュッテで頂く
スープとパンくらいの軽い昼食と一杯のビールは楽しいものだ。

その日夫は、彼にしてはほんとにめずらしく、道を間違えた。
マウンテンバイクで仲間と来た時に車を停めた駐車場が、ちょっと見つからなかった。
この辺かなと思うところで車を停めて歩き出すことにした。

道を間違えたことに対して、私は夫を咎めるようなことは何も言わない。
私が道案内役ならば、見知らぬ土地でならもっともっと間違うところだろう。

歩き出したものの、お目当てのヒュッテには歩けど着かず、
かれこれ1時間歩いて着いた小さな村の、
実に簡単なヒュッテを折り返し地点にすることに。

中に入ると、もうもうと煙草の煙が漂っていた。
店内で煙草とは、法律違反じゃないのかと思ったが、
しかしそこは、ドイツじゃなかった。
そういえばそこは、オーストリアだった。

ううむ、実に不快な臭い煙だ。
しかし、オーストリアに禁煙法は無い。

煙草の煙に、私はちょっと不機嫌になっていく。
仕方が無いというのに。

店の気のいい親父は、何か客の注文を運ぶ度に、
しょうもないジョークを飛ばし、客は皆笑う、私以外は。

(ジョークというのは、ドイツ語がちょっとくらい出来ても、
 ガイジンには理解が及ばない内容も多々あるものだ。)

私だけが一緒になって笑えないこんな状況など、過去に百回だって経験してきたではないか。
こんなことには慣れているはずだ。
私の神経は、鍛えられて図太くなったはずではないか。

しかし私は、昔みたいな「楽しい振り」が、今はもうできなくなった。
場違いな所にいるガイジンの気分に、ちょっと惨めになる。

隣のテーブルの客は犬連れで、その犬が私の足元にまとわりつく。
私は、大人気なく年甲斐も無く、それが嫌でさらに不機嫌になっていく。
(私はやはり、犬好きにはなれないのであろう。)

夫が悪いのではない。

しかし、居心地が悪い。

夫はビールを頼んだが、私は何となくビールはやめにした。
りんごジュースの炭酸割(こちらでは至って普通の飲み物)を頼み、
長居もせずに店を出る。
ちょっと楽しみにしていた軽いランチは、今日はもう抜きだ。

のどかな村の冷たい外気を胸に吸い込む。
髪もコートもすっかり煙草臭い。

帰り道に、夫が、とある立て札を見て私に言う。
これ、オモシロイ、サイン、ね。
そして夫は、これは、、、とその内容を説明しようとする。

私は、にべも無く答える。
ああ、さっき、来る時、それもう見たから。
ちゃんと読んで、意味、わかったから。

それは、道路わきの牧草地の草を保護するために
散歩の犬にフンをさせるなという内容だった。
これまで見かけたことの無い内容の、小さな看板だった。

わざわざ説明してもらわなくてもわかる、などと妻に言われて嬉しい夫はいまい。
もちろん夫は不機嫌になる。

そして私達は、そこから口も聞かずにただ歩いた。

と言うか、昔はともかくも今は、私は散歩の時に夫に話しかけることがほとんど無くなった。
私が無口でいれば夫も少しは静かになるだろうかと思ってのことだ。
しかし夫は元々よく喋る人だから、何かを見てはまた喋る。

夫のニホンゴに、すれ違う人達が、私達を、私を、振り返る。
それもまた居心地が悪い。

不機嫌な夫の足取りは早まり、不機嫌な妻の足取りは重くなる。
二人の距離は、50m100mと離れ、駐車場に着く頃には200m開いた。

これが私たちだ、と思う。

散歩など別にどうでもよかった。
ちょっと運動不足解消にでもなればと思い、出かけようと言う夫に付き合っただけだ。

いつまでも、「形」を取り繕うとする夫だ。
私の心には、今はもう何の努力も忍耐も、彼の望むような形では生じてこない。
努力をしようと思ったのも、今となっては昔の話だ。

ただ、こんな親で子供達に申し訳ない、と思うばかりだ。

家族の集うクリスマスに、
心の寄り添えないこんな二人が、ここにいる、笑い話みたいに。 

*** *** *** *** ***

犬を飼うほうが息子のためにはいいのか、と悩む私に向かって、
娘は何週間も前にきっぱりと言った。

うちみたいな家族に飼われる犬のほうが、可哀想だよ。

娘の意見は、これでなかなか、
真実を見据えているのだろう、と、私は思うのだ。

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