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靴の紐も結べない

夏場のサッカー練習に行く時、息子はいつもそれなりの格好をして家を出た。
トレーニングウェア(別にこれと決まったものはないから気軽なものである)に着替え、
せめてサッカー用ソックスくらいは履き、そしてサッカーシューズを履いて自転車で出かけた。

シューズを履こうとする時、息子はいつも「ママ、靴の紐結んで」と言った。
自分ではきつく結べないから、というのがその理由だった。
ことサッカーシューズに限っては、
本人は紐をかなりきつく締めたいらしかったが、それがうまくできない、という言い訳だった。

そんなの何度か結ぶ練習をすればすぐにうまくなるよ、と
私は息子に1000回も言ってはきたが、いつだって返ってくるのは生返事だけで、
何も改善しないまま息子は体だけ大きくなっていった。

去年の私はそれこそ、
11歳にもなった今でさえこんな風ならこの先は一体どうなるんだろうかと、
一抹の不安どころじゃなく、息子のことをかなり気にかけた。

家の中であれば、母親に靴の紐を結んでもらうことなど、
本人は別に恥ずかしいと思わなかったようだ。

紐くらい自分で結びなさいと放っておいても、
結局何もせずに私の手助けを待つ息子の姿がいつもあった。

私は、決められた時刻に遅れるというのは、それがどういう場に向かうものであれ、
あまり格好の良くないことだと思うところがあるので、
息子がたかがシューズの紐結びに手間取ったがために
サッカー練習開始時間に遅れるとしたら、やはりそれは良くないことだと思った。
何よりも、外では結構シャイな息子だから、
「遅れない」ということは、チームのメンバーに馴染める一つのポイントでもあった。

息子はさすがに、私がそんな風に思う人間だということをとっくに見抜いていたから、
自分が動かなければ母親がいつかは手を貸すことを知っていた。
子供が決められた時刻に遅れないようにと動いてしまう便利な母親がそこにいることを、
息子は過去の経験からしっかりと学んできている。

次からはちゃんと自分でやるのよと言って、私はまた息子のシューズの紐を結ぶ。

育児に不可欠な「忍耐」が欠ける私は、子供がぐずぐずするのを長くは見ていられない。
さらには、子供が決められた時間に遅れないようにと気を揉んでしまうから、
結局いつだって息子の思惑通りに、私は結局彼の靴の紐を結ぶ。
たとえそれが、私の本意でなくても、だ。

それはもう、息子にとっては日常茶飯事の如き状況となり、
母親に靴紐を結ばせるなど、ごく当たり前の光景になっていった。


日々の繰り返しや、毎度毎度の繰り返しというのは、これがなかなか恐ろしいもので、
その積み重ねが今の息子の姿なのだと私はいつも思う。

子供はいつか自分で何でもできるようになるのだから、それまでは手を貸してあげよう…
と、私はずっとそんな風に思ってきた。
娘に対しては、それで何か間違いがあったとはどうしても思えない。

しかし、その考え方が大きな間違いだったのだと今はやっとわかる。
息子に対しては、何ら通用しなかったのだから。

息子はいつまで経っても、
親が、特に母親である私が、最後には手を貸してくれるものなのだと思いこみ、
至って楽観視している。
自分は「上」に立ち、親などというものは「配下」だ。

いつかはママの手を借りなくても何でもできるようになるぞ、と思うのでなく、
いつだってママが手助けしてくれるから大丈夫、と考える。

私は、息子がそういう子なのだと気づくまでに、実に何年も要した馬鹿な親だ。
靴の紐すらきっちり結べぬ子供に育てたのは、他ならぬこの私だ。
そこには、肉親ゆえの盲目の愛情と、
そして肉親ゆえに信じ抜きたいという思いと甘えとがあった。
いつかはできるようになると、ただ信じて疑わなかった。


息子の足元にかがみ込んでは紐を結ぶ私の姿を、娘が偶然見ることも多い。
すると娘の視線に即座に軽蔑の気持ちが宿る。
娘の目など見なくても、私はそれを感じる。

どうして弟をこんな子に育てたのだと、娘の視線が私を非難する。
そしてそれは、愚かな母親への嫌悪の念へとつながって行く。


既にかなり修正困難な、間違った子育ての結果である息子の前で、
跪いて靴紐を結ぶ私の姿は、滑稽以外の何物でもない。

私の忍耐の無さが原因でもあり、
息子本人の向上心の無さもまた原因だろうと思う。

何年かの長きをかけてこうなってきたのだから、改善には倍以上の時間がかかるだろう。
そしてその確固たるやり方さえも、今の私は見出せない始末だ。 
なんと情けない親だろうかと思う。


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