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昔はかわいかったのに

息子が小さかった頃は、
「ママのご飯は世界で一番おいしいよ」
なーんてことを私に言ってくれてた。

無条件に親を信じ愛してくれたあの子は、
一体どこに行っちゃったんだろうな。
きっともう消えちゃったんだろうな。

今の息子ときたらどうだ。
気分に合わない料理を前にすると、
「何だこれ?」「こんなもん食えるか」的なドイツ語が
口をついて出てくる。

息子の帰宅時刻に合わせてこちらが用意しておいても、
それが気に入らなければ怒ってこれ見よがしに自分で何か作り始める。
思い通りの食材が冷蔵庫に無ければ、怒って食べないこともある。

そして息子は、今食べたいと思う物を食べさせてもらえない自分を哀れみ、
そんな親の元に生まれたその身を哀れんで、
「それでも主婦か」とドイツ語で私に言う。

そしてこう付け加える。
あぁ他の子はいいよな。料理上手なお母さんがいてさ。

(娘は、「ママの料理をまずいとかって思ったこと無いんだよね」
 と言ってくれるのだが…。)


例えば息子が私に向かって話すドイツ語の中に、
一つでも私の知らない単語が混じると、
彼は目ざとくそれに気づいてこう言う。

「何だよ、こんな言葉も知らないの?
それでもオトナ?まるで幼稚園並みだな、ばーか。
あぁ他の子はいいよな、言葉がまともに出来るお母さんがいてさ」


日に何度、息子から馬鹿呼ばわりされてるだろうな私。
いや、「馬鹿」よりひどいことだっていくらでも言われてる。
この頃では、私の姿が視界に入ることすら、息子には腹立たしいらしい。

ドイツ語で汚い言葉を言われると、
それを日本語で言われるほどにはぐさりと来ない。
しかしそれでも意味はわかるから傷つく。

「馬鹿」だけは日本語で言われてるから、心にかなりぐさぐさくる。
毎日毎日がそんな風に過ぎて行く。
涙が浮かべば、息子はそれを見てまたせせら笑う。
何を言っても聞き入れてもらえない。
何かを片付けるようにとか、そんなことを息子に言えば、
それ主婦の仕事だろ、とくる。
私は、返す言葉が何も浮かばなくなる。

息子が欲しいのは、
どっしりしていてよく笑い怒るとおっかないドイツ人のお母さん。
安心して信頼できる、ドイツ語完璧なドイツ人のお母さん。
だから私の言う事など、まともに聞けるわけがない。


彼の心はドイツ人だから、
私が日本人であることが気に入らない。
国際結婚であることを、
いずれ子から恨まれることになろうとは思いもしなかった。
ドイツ人並みの語学力が私に無いことを、
蔑まれることがあろうとは思いもしなかった。


この現実が、例えば18年前とかに見えていたなら、
私は子供を望まなかったかもしれない。

どうして私は子供を生んだのだろう。
あんな苦しい思いまでして。

いっそ子供のいない生活の方が、どれ程心が休まっただろう。
この頃本気でそう思う。

子供がいるって素晴らしいと思った昔は、
とりあえず今はもう蘇って来ないみたいだ。


でも人は、将来が何も見えないからこそ気軽なもので、
そこが人間の良いところなんだろう。
だから「そのうち子供も欲しいねーふふふ」なんて言って笑えるのだ。
そして子供が生まれれば、ああなんて幸せなのかと心底思い、
子供のおかげで世界までもが変わって見える。
そう、それが人というもの。


それにしても、私のことを認めてくれているのは、
実のところウサギのハッピーとモルモットのズムちゃんだけかも。
その「ふたり」には、怒られることないものな。
あぁそんな現実に、私はまたまたため息が出る。

(今回はコメント欄閉じてます)

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