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軟膏

自転車で転んだのはこの前の日曜未明で、
その日曜はほぼ一日中ベッドの中に居た。
鏡を見るのもオソロしく、気分は最低だったので、
読書で気を紛らわそうと頑張った。
でも頭の半分は前夜を振り返りっぱなしだった。

翌月曜朝、もう外へは一歩も出たくないというのに
娘を、車で15分の町にある塾まで送らなければならなかった。
(↑ 娘はドイツで初めての塾通い)

娘を送った帰り、真直ぐ家に戻らずに
家の近くのクリニックに寄ることを思いついた。
本来ならば予約を取ってから行くものだが、
とりあえず行ってみたら、受け付けてもらえた。

私は、医者に行かず何もしないで直るのをじっと待つこともできた。
でも、もしかしたら、受診すれば何かすごい軟膏でも出してもらえるかも、と期待した。
傷が少しでもきれいに直るような特効薬があればいいのにと思った。

月曜の朝だったから、待合室はちょっと混んでいた。
こういう田舎のクリニックだと、待合室に入る時には
誰でも「おはよう」とか「こんにちは」と挨拶するのが普通だから私も言おうとしたら、
唇とその周辺が特に腫れていたのでうまく言えなかった。
そしてうつむいて順番を待った。

40分待って診察室に通されると、じきに先生が入ってきた。
そこの先生はまだまだ若くて、私はどうも彼が苦手。

あの先生がなぜ苦手なんだろうかと、
私は息子と話し合ったことがある。
実は息子も「なーんかあのせんせ違うよね」と言う。

多分それは、彼の若さのせいというよりは(それもあるにはあるが)、
机をはさんで向かい合った途端にいつも両肘をついてガバッと身を乗り出し、
パッチリした目でいとも明るくこちらの瞳を覗き込んで、
元気いっぱい症状を聞いてくるあたりに、問題があるような気がする。
その雰囲気に、いつだってこちらは気押されてしまうのだ。
もっとこう、落ち着きのある穏やかな眼差しで聞かれたいのに。
(私の知る限り、ドイツのお医者さんはみんなそうなので。)

だから私は、彼のクリニックには行きたくない。
しかし、近所という利便さにいつも負ける。

「傷はいい感じにきれいになってきてますよ。
軟膏を出しておきましょう。他にできることもないし」
と言って彼は私の思惑通り処方箋を用意した。
帰りに薬局に寄って購入後、帰宅。
医者に行ったのだからと思うと、気分的に安心できた。

帰宅すると、その日スウェーデンに発つ夫がほぼ荷物をまとめ終わっていた。
私は喋りにくい口で夫に言った。
「先生ね、私の顔見てすぐにこう言ったんだよ、『ははーん、自転車でしょう』って」

「『ダンナさんにどうかされましたか?』と先生から言われなかった?」
と夫が言ったので、私はなるほどーと思って笑った。
笑ったといっても、腫れと引きつる傷で思うようには笑えなかったが。
「そうねぇ、今頃先生、警察に通報してるかも」と言ってやった。

確かに、暴力夫に何かざらついたもので
口元を殴られたように見えるかもしれなかった。
有らぬ噂が立たぬよう、やはりここはせいぜい家から出ないことにしたい。
しかし、誰かがそういう誤解をして夫をワル者に仕立て上げ、
私には同情してくれたなら、それはまあそれでも良いかなと思わないでもなかった。

さて、傷をぴちゃぴちゃと洗って、ありがたい軟膏を早速塗ってみる。
なかなか脂っこい軟膏だった。

私の傷は、こすれてできた火傷みたいなものと、
小石とか砂でじゃりっと引っかいたような傷のミックスで、
軟膏を塗って1時間後に鏡を見たら、
全ての傷が、油膜に塞がれ息も出来ずに苦しんだ挙句に
回復どころか悪化しつつあるように見えた。

それでも先生を信じようと思ったが、
2時間が過ぎる頃には黄色い膿っぽくなってきたから、
ぬるま湯で流し、ティッシュで押さえて乾燥させることにした。

そう言えば幼い頃に母が言っていた。
冬は傷を包んであげるといいよ、
でも夏の傷はきれいにして乾かすだけの方がいいよ、と。
(もちろん傷の深さによりますが。)
やはりここは母の言いつけを守ることにしよう。

でも、今日は意味の無い軟膏しか先生は思いつかなかったのだと
わかったところに収穫はあった。

クリニックから帰宅し、私の傷が軟膏で化膿し始めた頃、
スウェーデンに発つ夫と一緒に空港に向かう時間になった。
とことん家から出たくないというのに、その日二度目の外出と相成った。

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