FC2ブログ

良いクスリ

約3週間前のこと。
2日後には日本に発つという日だった。

その日は、娘が友人宅に泊まりに行くことにしていた日だった。
夕方になる前に私が車で送って行った。
その友人宅は、我が家からほぼ北に17km程の町にある。

その夜―10時半くらいだった―娘の携帯から電話があり、
迎えに来てと言われた。
外からかけている様子だったので場所を聞いたら、
家からほぼ東にこれまた17kmの町にいると言う。

友人宅に居るものとばかり思ったら、違っていた。
どうして迎えに行かなくてはならないのか聞いたら、
「バーに入ろうとしてつかまっちゃった」ということだった。

ドイツでは、16歳からビールならば飲んでも良いことになっている。
と同時に、16歳からバーなどアルコールを出す店への出入りも解禁になる。
ただし、24時までだったか、そういう規則も付随する。

そこの店の入口には、
がたいの大きなセキュリティのお兄さんが2人くらい居て、
16歳未満の子が入店しないよう見張っている。
店としても、16歳未満に対しアルコールを売ったとなると
法に触れ営業停止になる可能性があるので、注意はしている。

娘は、友人宅でもう一人の友人と落ち合い、
つまり女の子3人でそこの町まで行き、
若い人達に人気があってこの界隈では結構有名なそのバーに入ろうとしたのだった。

友人Aは既に16歳なので問題なかった。
別の友人Bと娘は、現在15歳10ヶ月。
たった2ヶ月後には16歳でも、今はまだ15歳。
友人Bは、3歳年上の姉の身分証明を提示し、
まんまと入り口のセキュリティのお兄さんをだまし店に入った。

そして娘は、友人Aの身分証明を借りて入ろうとした、らしい。
それじゃ友人Aは何も提示しないで入れたのかどうか、
セキュリティのお兄さんと既に顔見知りだったのかどうか私にはどうも不明だったが、
とにかく娘は、つかまった。

「親が迎えに来ないと警察を呼ぶと言われているから、
だから迎えに来て」と娘が電話で言う。

馬鹿なことをしてくれるものだ。
時間は夜の10時半をまわっていた。私は既に「飲んで」いた。
これで車で出たら、運が悪ければ私が途中で捕まることにもなる。
明後日には日本に発とうというのに。

意味があるかわからなかったが、
たっぷり1リットルの水を飲み「薄めて」から家を出た。

店に着くと、セキュリティのハンサムなお兄さんに言われた。
「お宅のお嬢さんはこうこうこういうイケナイことをしました。
今回は見逃してあげますが、次にこういうことがあったら警察に通報します。
あ、それから、彼女は今日から6ヶ月間当店に立入禁止となりましたのでよろしく。
その6ヶ月の間に16歳になろうと関係ありません」

ついでに友人Aも、身分証明書を娘に貸した罪に問われて、
6ヶ月間立入禁止となったそうだ。

時刻は既に23時を回っていた。
娘を引き取り、別な場所で待っていた友人AとBとも合流した。
タクシーで帰るからいい、などと言うその二人を、
しかし私はAの家まで送ることにした。
こんな時間に女の子二人にタクシーを拾わせ、
何十ユーロのお金を払わせる気にはならなかった。

店の近くに停めた車に乗り込む直前、
娘の幼馴染み(友人Cにしましょう)に出くわした。
この子も、3ヵ月後には16歳だが、今はまだ15歳。
6ヶ月間の立入禁止をくらった娘を、Cは半分哀れみ半分笑った。

あなたも気をつけなさいよと私が言うと、
でも私はこれがあるから大丈夫と言ってCは片手の甲を私に見せた。
そこには、黒っぽい色の丸いスタンプのあとがあった。

で?それは一体何なの?と事情を知らない私は聞いた。
「16歳以上の子は、店に入る時に入り口でこのスタンプをもらうの。
これがあると、一度店を出ても今度はノーチェックでまた入れるわけ。
で、知合いの16歳以上の子に、スタンプをもらったら一度店から出てきてもらって、
手の甲同士をくっつけて自分の手にスタンプを写すわけ。
乾く前にやればちゃんと写せるのよ。
それでちゃっかり16歳になれて出入り自由になるってわけ」
Cは無邪気に笑い、どうしてあなたもそうしなかったのと娘に言う。

私は、ひとを騙すような行為が嫌いなので、
ああやって若い子達が大人を、セキュリティのお兄さん達を
軽く欺こうとする姿勢もやはりとっても良くないことと思う。

しかし、まあいい。Cは私の子供じゃない。
まったく、仕方ないわね、気をつけなさいよ、とまた言ったが、
小言など、あの無邪気な笑顔に意味が無さそうだった。
あとで娘に聞くと、Cは既に何十回もあの店に入ったことがある、とのことだった。

さて帰宅の途につこう。
随分と遠回りになるが仕方が無い。私は友人A宅まで行って3人を降ろし、
娘はそこで一泊分の荷物を取って来て車に戻った。
これでまだお泊り会を続行できると思ったら甘い。

楽しいはずのお泊り会は、娘にとってはそんなわけでおじゃんになった。
こういうこともまた良いクスリになったというものだろうと私は思ったが、
女の子達は何をどう受け止めただろう。

それにしても、いつも割と何事にも動じないクールな娘が、
さすがに「警察」と言われた時にはびびったらしく、
まあ少なくとも娘にとっては良いクスリになったと思う。

そして私はといえば、
とてもラッキーなことに飲酒運転撲滅検問に出くわすことも無く、
無事に帰宅できたのでよかった。
ああしかしこれも、欺いたことになるのだろうか。

FC2ランキングへブログランキングへにほんブログ村主婦ブログへにほんブログ村ドイツ情報ブログへ
0円のWEB素材屋さん
のランキングボタンです。
ボタンにカーソルを乗せると行き先が出ます。
さあ行きたいところをクリックしましょう!ついでに私も喜びます。
スポンサーサイト



コメント

ブログの更新毎回楽しみにしていましたが今回の件がっかりしました。
飲酒運転しましたなんてやってることが中学生の犯罪自慢といっしょじゃないですか。

自惚れるのも大概にしてほしいです。
おクスリが必要なのはあなたでは?

NoTitle

no nameさん、あなたのコメントを見た途端、
私の心臓はバクバクし、頭のてっぺんから足先へと力がすっかり抜けました。

あの時は、娘が警察に補導されることを思ったら、
私が迎えに行くしか無い、と思いました。
飲んだことをここに書かずに済ませることもできましたが、でも書いてしまった。

自惚れるつもりも無ければ自慢するつもりも毛頭ありませんでした。
そのような発想がひとにはあるのかと、あなたのコメントを見て思いました。

これまで更新を楽しみにして下さってどうもありがとうございました。
不快な気持ちにさせてしまう記事を書いたこと、すみませんでした。

NoTitle

ガーネットさんの記事が自惚れだの自慢だのと解釈されてしまった事、残念に思います。
私には、思春期の娘を持つ親の心配、苦労、理解しようと勤めているガーネットさんの思いなどが切なく伝わって、共感できましたよ。私もきっと同じ行動に出ただろうなぁ、と思って読みました。

私にもオクスリ必要でしょうか?

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Marieさん

うっっ思わず涙が浮かびました、いやほんとに。
昨日は例のコメントにずどーんと落ち込みましたからね。
Marieさんどうもありがとうございます。
共感して頂き嬉しいです。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Message
★当ブログへようこそ。
★コメントは承認後の公開です。
★非公開ご希望コメントに対しては、お返事したりしなかったりです。
★拍手コメントは受付けていません。
★ランキングボタンや拍手をクリックして下さる皆さん、どうもありがとう!
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
プロフィール

granat

Author:granat
初めまして。ガーネットです。
南ドイツ・バイエルン州に住んでいます。
どうぞよろしく!

もっと知りたい方はこちら
FC2カウンター
最近のトラックバック
ブログ内検索
月別アーカイブ