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どきどきアウトバーン

前々回の「靴、ぬいで!」の続きです。

夫の実家を後にして、私達は夫の友人宅へと向かった。
アウトバーンと一般道を使い、さらに走ること30分。

夫は友人宅に一泊し、二人は去年から計画していた旅行に翌朝から発つ。

私に与えられたミッションは、
この友人宅から自宅までの180kmの距離を、自分で運転して帰ること。

そのうち約110kmはアウトバーンを使う。
ミュンヘンの西側からミュンヘンの北を廻って
東側へ抜けるまでがアウトバーンになる。
途中、ミュンヘンのサッカースタジアム、あの Allianzアリーナ脇も通過する。

普段しょっちゅう車には乗っているものの、
私の行動範囲などたかが知れてる。

友人宅から180kmの距離をアウトバーンも使って帰るのは、
恥ずかしながら、実は不安だった。

前夜、私は急に思った。
夫が戻るのは2週間後だ。我が家は車が一台なので、
夫が明日一人で運転していけば、私は2週間車無しの生活になるけれど、
それでも何とかなるかな?と。

車無しでは不便だが、でも不安な気持ちでアウトバーンを走るなど、
できれば避けたい気持ちが芽生えてきた。

私は、ドイツとオーストリアのアウトバーンを走ったことはあるが、
(ついでに、スウェーデンでも自動車道を走ったことがある、と自慢しておこうっと。)
それでも両手の指を使って余りが出るくらい、経験が少ないのだ。
それに距離も長いし・・・。

だが、しかし、子供がケガをするとか歯が痛むとか病気になって医者に、
などということは、いつだって車の無い時に限って起きたではないか。
うーむ、やはり車無しの2週間はきついか。

まあ、そんな私の不安など、夫は相手にしない。そう、相手にしないのだ。
大の大人(この場合、それはもちろん私)たるものが、
何かに対し、それは心配だからやめておく・できない・したくない、などと、
弱音と言うか、とにかくネガティブな返事をするのを、夫はひどく嫌う。
大の大人が、たかが運転を不安になるなど、彼には理解不可能だ。

夫は不安がる私を見て、首を横に振るジェスチャーを見せる。
私が心から嫌っている、ドイツ人のこのジェスチャーからは、
お前は(運転も不安がる)ダメ人間だ、と言いたい夫の気持ちが伝わってくる。

大の大人は、とりあえず大抵のことは自分で難なくできるべきである、
それが外国であろうとも、よほどのことがない限りは、というのは夫の持論。

実際彼は、東京でもかなりのことを自分でやってきた。
こと運転に関して言えば、都内も地方も高速道も、どこだって運転した。

それに、旅行でどこの国に行こうとも、
まるでそこの道路を知っているかのように、
レンタカーをすいすい運転できる人なので、
私はその点ではとても感心する。

そして私は、まさに彼とは正反対。
知らない所での運転は、家から距離が離れるほどに、不安が募る。

夫は怒る。
日本で運転するほうがよっぽど大変だ!
アルファベットの表示が無いことだってどれだけあるか!

私は、日本を代表してドイツに怒られてる気分になる。

もちろん、ドイツの一般道もアウトバーンも、
日本よりはるかに走りやすくできているに違いない。
渋滞もおきにくい設計だと思う。

しかし、私はドイツ人じゃないから、
彼の気持ちをそっくりそのまま感じることは出来ない。

来る途中で寄った夫の実家では、義両親以外に義兄夫婦にも会った。
義母も義姉も、一人で帰る私を気遣ってくれる。

義姉などは、もともとあまり運転自体好きじゃないから、
自分にはアウトバーンを使ってなんて出来ないわ、とまで言う。
不安を覚えるのは私だけじゃないとわかって、私は嬉しい。

義兄は一言、そんなの走ってりゃいつか家に着く!
もしかするとオトコというのは、運転に不安が無いのだろうか。

さて、夫について友人宅まで来た以上、
私は自分で運転して帰らなくてはならない。

行きの道すがら、夫の運転でアウトバーンを走る間も、
私が帰る車線、つまり反対車線の、大きな道路標示がある度、
振り返って確認までした。

私の不安がどこから来るかというと、
アウトバーンの標示に出てくるドイツの地名の、
具体的な位置をちゃんとわかっていないところ。

ミュンヘンの西から入り、ミュンヘンの北を廻って東側へ抜けるためには、
途中いくつもあるジャンクションの度に、間違いは許されない。

だって、間違ったらきっと、私には修正不可能に思える。
もうスリル満点、はらはらどきどきである。

ベルリン方面に行かないのはわかるが、
シュトゥットガルト、ニュルンベルク、パッサォ、、、
あとはどこへ行っちゃいけないって?
などと夫に聞き、またしても呆れて夫は首を横に振る。

友人宅で一休みし、いよいよ一人帰途についた。
友人宅からアウトバーンまではかなり単純な道順だったから、迷わなかった。

アウトバーンに入り、あ、持って来たBoAのCD、セットするの忘れた、と気付く。
不安な時に日本語の曲が聞こえていると何だか安心する私だ。

時速100kmに抑えつつ、体ひん曲げて小物入れからCDを出してセット。
BoAの歌声に、ちょっとだけ落ち着く。

うーん。私って、、、
ドイツのアウトバーンを疾走しつつBoAを聞く、世界でただ一人の日本人だな。

しばらくは空いていたから落ち着いて走れたが、
ミュンヘン手前のジャンクションで早くもドキドキ。

ドイツの地理を頭に入れるのはとうに諦めてたので、
アウトバーンの番号だけ頭に入れておいた。
96から99から94。

でも、ドイツのアウトバーンというのは、
ドイツでの番号と、ヨーロッパでの番号とを持っているから、
標示の中に沢山番号が並んでいることもある。
その中から96、99、94を探しつつ走る。

この日私は、異例のゆっくりさで走った。実に時速100~120km。
このスピードは既に、皆さんの迷惑というものだ。
混んでいればものの2分で100台に追い越されるかの遅さ。

でも、不安な時は気持ちがスピードに追いつかない。
もっと早く走るとコワイのだ。

さて、一体いくつジャンクションがあったかわからないが、
一度だけ焦った箇所があったものの、結果的にはなんとか間違うこと無く、
私は無事に家までたどり着いた。

運転を終えてこんなにホッとしたことはなかったくらい、ホッとした。
ああ、神様ありがとう。
180km、ちょうど2時間、かかった。
こんな長距離を外国で走った経験はこれまで無かった。

夫は、私の弱音を取り合わない。相手にしない。
そして私は、その都度腹を立てながら、
どうしてこの人は、
私を勇気付けるやさしい言葉の一つも言えないのだ、とよく思う。

そう思うとき私は、自分がいかにも日本人女性ならではの、
甘ったれな部分をいまだに彼に対し見せている、と自分で感じる。

結婚して何年もたって、
夫だっていつまでも優しい言葉で私を励ましたりは、いい加減しなくなった。
ま、お互い様だ。

私は、今回のような気の進まないことでも、結局はいつも夫の言うように行動し、
無事にそれが済めば、
結果、私には、また一つできたのだ、という思いが生まれる。
それは私の、ドイツで住んでいく自信につながる。
むかつく夫のお陰で、というのが少々癪には触るが。

そして今日午前、息子はサッカークラブでの試合があった。
集合場所まで車で息子を送っていきながら、
ああ車があって便利便利、と思った。

ああ180kmを無事に帰って来れて良かった。
私はひそかに自分を褒める。
小さな自信がまた一つ生まれて、今日はけっこうハッピーな気分の私だ。

だがもちろんこんな私の気持ちなど、夫に言わせれば、
けっ!何を大げさな!である。

たいへん長い記事になってしまいました。
最後までお読み頂きありがとうございました。


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